同一艦での1/700艦艇模型選定法
1/700艦艇模型の有名艦では複数のメーカーから同一艦艇のキットがでています。大変ありがたい事ですが、購入時の選択に迷うことも出てきます。
ここではズバリ模型の選択ポイントを紹介します。自称、模型ソムリエの当管理人がお勧めすることのメリットは
その1: 組み立て経験が豊富なこと。この記事記載の2021/8月現在、2000年頃から作り始めた完成済みの1/700艦艇模型が200隻を超えています。
その2: 当サイトは模型雑誌や有名サイトとは異なり、特定の模型メーカーとの広告など直接のつながりがありません。大人の事情とは無縁です。(自慢になってませんが)
その3: 素組派であること。エッチングや別売りパーツ使用は最小限にとどめているので、模型本体の出来、不出来を気にして購入しています。
その4: 古いキットの組み立て経験もあること。1980年の前後2年程に外国艦もふくめ約50隻のウオーターラインシリーズの作製経験もあります。残念ながら当時作製の艦は全て廃艦ですが。
完全に個人的意見ですが、参考にするかはあなた次第です。
前置きが長くなりましたが、同一艦で複数種類がある場合は、ズバリ
<第一選択肢は、最新模型>
<2008年以降発売の模型は出来が良いので、メーカーの好みや価格で選ぶ>
になります。
フツーでひねりがないです。すいません。
発売日のデーターは、資料紹介(作製のお供)に掲載の艦艇模型データベース2020
第1巻 戦艦、軽巡、水上機母艦、潜水母艦等
第2巻 空母、重巡、駆逐艦、潜水艦
に、2019年発売分まで掲載されています。
注意点は、ウオーターライン→フルハルパーツ追加の模型などは元キットより新しい発売年が記載されていることです。解説本文を注意深く読むと元キットの発売年が書かれていることもあります。

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1/700艦船模型データベース2020年版(1) 2019年 12 月号 [雑誌]: モデルアート 増刊
1/700艦船模型データベース2020年版(2) 2020年 03 月号 [雑誌]: モデルアート 増刊
戦艦限定ですが、NAVY YARD Vol45(2020/11発売)が入手可能な戦艦すべて(38隻)を紹介する特集<1/700戦艦総覧>になっています。この本でも発売年を確認できます。拡大写真も多く解説も丁寧なので戦艦模型の状態を知りたい方にはお勧めします。

Amazon
ネイビーヤードVol.45 アーマーモデリング11月号別冊
本が入手できない場合はAmazonなどの販売ページにも載っている場合もあります。ただ、少し古い模型だと発売日ではなく、取り扱い日なので一応注意してください。
手前みそですが、当サイトで紹介した模型でも紹介ページの最後の方に、紹介模型のメーカーと発売年、同型艦があればそのメーカーと発売年を判る範囲で明記しています。
元データーは 艦艇模型データベース2020 です。
<第一選択肢は、最新模型>
当然ながら、後発メーカーが同一の模型を発売する場合には、先行メーカー以上の模型を目指して開発します。現在でも研究が進み新情報が得られることもあります。
これにより最新情報を反映した模型にできます。
また金型は、技術が日々進歩している上、新しいものでは劣化が少ないです。古い模型では経年劣化している場合があります。
<2008年以降発売の模型は出来が良いので、メーカーの好みや価格で選ぶ>
2008年以降はフジミ模型の特シリーズの戦艦、重巡洋艦群の登場により、一気に模型の精度がアップしました。これに伴い、各メーカーでもいい模型がどしどし出てきています。
2008年以前は同型艦では極力共通パーツを多用し、艦毎の違いは個別パーツで表現していました。2008年以降、金型作製を惜しまず個別の艦の特徴を精細に表現するようになりました。
個人的にはフジミの特シリーズは模型界のドレッドノート級だと思っています。
これにより艦艇模型のレベルが一気に上がりウオーターラインシリーズ、ピットロードでも急に模型が良くなった気がします。また、2015年参入のヤマシタホビーもこのレベルを十分クリアした製品になっています。
2008年以降の例えば2013と2018発売で大きな差があるかというと、管理人の視点レベルではほぼ無いです。そのため、
2008年以降の模型があるならそれを第一選択肢にし、仮に複数あればメーカーの好みで購入すると良いと思います。
各メーカーの特徴については追って紹介します。
<価格について>
価格は、同一艦のウオーターラインタイプの艦艇模型では大差ないようです。ウオーターラインタイプとフルハル(選択)タイプでは、ウオーターラインの方が水面下の船体の部品数が不要なため安価です。
定価ベースでの価格差は大型艦だと1000円ぐらいにはなり、コスパ重視の方には無視できないかもしれません。
そのため、最新の模型がフルハル(フジミ艦NEXTシリーズなど)でお値段が張る場合には、2008年以降の新しいめのウオーターライン形式の模型を購入しても問題ないです。
メーカー毎の特徴
ウオーターラインシリーズ連合3社(アオシマ、ハセガワ、タミヤ)
1/700スケールを艦艇模型の標準とした立役者がウオーターラインシリーズの各社です。基本コンセプトはコレクションのため作りやすさ重視のようです。
そのため、高精細とは言えませんが、部品点数は抑え気味で作りやすい模型が多いのが特徴です。その中でも最新の模型は解像度も明らかに高くなっており進歩しています。
最近ではアオシマのリリースが活発で艦艇模型界を盛り上げてくれており、ハセガワも旧作のリニューアルを着実に進めています。
一方、タミヤは1/700艦艇模型の新開発には消極的で、タミヤ担当の駆逐艦(特型、白露型)、5500t軽巡の一部、夕張などがウオーターライン連合外のメーカーによりリニューアルされている状態です。
フジミ模型
元は ウオーターラインシリーズ連合 に所属していましたが、1992に脱退しています。
その後ウオーターライン内の縛り(連合内で同一艦は発売しない)から外れシーウエイシリーズ、特シリーズとして独自路線で1/700艦艇模型を出していました。
2008年頃から特シリーズで発売された重巡洋艦、戦艦群が超高精細かつ、お値段据え置きの素晴らしい模型で、一気に艦艇模型の素組での到達レベルを高めました。
その後、艦NEXTというフルハル接着剤不使用の新シリーズも立ち上げています。
ピットロード
1990年台からウオーターラインシリーズで未発売の小艦艇(駆逐艦峯風型、神風型、水雷艇、海防艦、潜水艦)のリリースで1/700模型群を充実させていました。
2000年代より空母、重巡、駆逐艦の人気艦種で勝負を挑んでいます。
メリハリあるモールドと見栄え重視のディフォルメが入った設計です。しかし、2010年以降発売の模型では雰囲気がかわり、高精細と組み易さを両立した傑作が多数でています。
ヤマシタホビー
ティテールアップパーツのメーカーでしたが、2015年の特型駆逐艦をスタートとして駆逐艦に参入しました。2021現在多数の特型駆逐艦に加え睦月型、松型、橘(改松)型が出ています。
いずれも各クラスの決定版と言い切れる優秀作です。特型駆逐艦での各艦の作り分けは大手メーカー以上です。価格もリーズナブルでコレクション派には嬉しいです。
シールズモデル
日露戦争時の模型に特化したメーカーです。艦の全長が短く丸っこい感じがする当時の艦の特徴が良くでており、ディテールも最新模型に劣りません。類似の模型を出しているメーカーは無いです。共通武装パーツを使っているので、統一感もあります。
たまに違った時代の模型を作りたくなるときに重宝します。
その他
・カジカモデル、第一次大戦の金剛型
・トミーテック、曳船、クレーン船などの特殊船舶
・フライホークモデル、海外艦艇
・童友社、フルハル潜水艦
の各メーカーは管理人作製経験あります。私が作った範囲では精度的も十分で良作揃いです。
模型選択の補足
模型選定の重要ポイントについては以上の通りですが、これだけでは選択しにくい個別のケースについて思うところを記載します。
戦艦: 大和、武蔵は2018年以降発売された最新モデル(フジミ艦NEXT,アオシマ、ピットロ―ド)の中から好みのテイストのを選択する。管理人はいずれも未購入なのでどれがベストかはコメントできません。
ただ、直近の模型の出来の良さからピットロード製に食指が動きます。
2024年ピットロード製大和を作製しました。期待にたがわぬ良いできでした。
空母: 信濃の最新模型は2017発売のフジミ艦NEXTです。ウオーターライン模型がよければタミヤ製も選択肢になります。発売は1999年と少し古いが傑作との呼び声が高いです。(管理人は未作製)
重巡: 妙高型はフジミ製は2005年発売で高密度ディテールモデルになる前の模型です。そのため、2000~2001年発売のハセガワ製と出来が拮抗しているので好みで選択。
私は両方作製済みですがいずれもマズマズの良作です。
軽巡: 回天輸送艦型の北上はフジミ版(2014)、アオシマ版(2017)と近い時期に出ています。精密度重視ならフジミ、重雷装型との統一性からは重雷装型もリリース済みのアオシマを選択します。
買ってはイケナイ模型
古い模型でも作製しやすい、安価などのメリットあれば十分選択肢にはなります。管理人ももっと年齢が上がり目や手が衰えた場合には、御用達のフジミ製から、組み立て簡単なウオーターラインに回帰するかもしれません。
それにしても最新模型と比べると、厳しい~と思う模型をソンタクなしで列記します。
すべて現在(2021/8)でも定番商品として売られているものです。全て作製経験あります。(殆ど、廃艦ですが)
戦艦:
ハセガワの金剛型。フジミ模型がウオーターラインシリーズから脱退直後の1993~4にリニューアルされたたため古く、ディテール表現がひと昔前のタイプです。
後部飛行機作業台など、個別艦の違いの表現も不十分で、フジミの2010年台発売の特シリーズと比べるとツライものがあります。
軽巡洋艦:
フジミの神通、那珂。1970年台の金型でさすがに古い上、前部魚雷発射管の状態が模型の設定年と異なっており修正が大変。
2008年発売のアオシマ製は堅実な作りで要修正点無いです。敢えてフジミを購入する必然性はないです。新パッケージで特シリーズとして新品でも販売されているので要注意です。
同時期の金型であるフジミの長良、名取、鬼怒も神通、那珂のような修正は不要ですが、さすがに古すぎなので、1990年代のタミヤ製の一択です。
艦艇模型データーベース2020年版2巻には <昔ながらの”プラモデル”が味わえる> とオトナの紹介がされています。
駆逐艦:
タミヤの白露型。艦首楼が短く修正が大変。1970年台の金型にしてはしっかりはしているが、2011年発売のフジミ製、ピットロード製があり、それぞれ出来も良いので敢えてこれを購入するのは?です。
アオシマの秋月型。これもフジミ脱退の直後の1990年台の模型で古さを隠せないです。リノリウムおさえのモールドもなくあっさりしすぎです。
秋月型最大の特徴である主砲塔に本来は無い防水布がついており違和感があり、艦首の形状も細長すぎです。
後発のフジミ、ピットロード製の出来が良いので購入は低優先です。
フジミの松型。1970年台の古いキットでパーツ全体が大味。さらに艦橋は松型だが、艦尾が角形の改松型となっており、松型、改松型のどちらを作るにも修正がいります。
2021発売の最新のヤマシタホビー製もある上、タミヤの松型、ピットロードの改松型もまずまずの出来のため、これを選ぶのはやめた方が良いです。
これも特シリーズのパッケージで新品を見ますので間違って購入しないようにご注意を。
潜水艦:
アオシマの伊1&6。他に列記の模型とは違い他社からは出ていない型式です。しかし、艦側面の水抜き孔のモールドがダルすぎ、最近の模型と並べるクオリティに上げるのは相当大変です。
どうしても伊1型、伊6がほしい場合には、艦側面のモールドが似ている、アオシマ最新作の伊156からの改造を考えた方が良いと思います。
フジミの伊15&伊46。これも1970年台発売のキットで古さが隠せないです。伊15はアオシマの伊19と同型艦で、伊46はタミヤの伊16と外観は同じです。
作るならばアオシマ、タミヤの模型で代用した方が良いです。ちなみに伊46は回天搭載艦として模型化されていますが実艦は回天戦が始まる前に戦没しています。
その他:
ピットロードの神川丸、君川丸。特設水上機母艦ですが、船体のサイズが13mmも小さいです。これだけサイズがずれると艦の印象も変わっています。
後発のアオシマ製がカッチリした造りなので、神川丸級が目的の場合は購入しない方が良いです。
ただし、一回り小さい貨物船型艦艇の改造ベースと割り切って購入するのはアリです。この場合には艦尾側の船倉部2か所が飛行甲板設置のため高さが足りないので改造した方が良いです。
怖~いもの見たさで購入をお考えの方にはご不便おかけしますが、以上の模型のアフィリエイトリンクを貼るのはヤメにしておきます。