模型が精細にはなってきており、特に機銃類(単装、二連装、三連装機銃など)はすごく小さくなりました。
初期のウオーターラインシリーズを知っている身からは隔世の感があります。(オヤジが入ってしまいました)。この進化は各パーツ全般に言えることです。
しかし遠目からは最も目立つ部品であるマストは、プラスチックの強度の問題であまりに細くすることはできません。
部品を小さくできる金型の進化は大きいですが、細い樹脂に強度を出せるかは、樹脂の進化に負う所大です。
使用する材料(ポリスチレン)にコストや成型からの制約もあり、大きな変化がないためです。
この解決にはエッチングパーツを使用する方法もありますが、ここではお手軽に金属線を使う方法を紹介します。
1/700艦艇模型のマスト金属線化で使用する材料
金属線の材料:真鍮か銅の金属線を使うことをお勧めします。ステンレスなど鉄系の材料よりも柔らかく加工しやすいです。一旦組み立てると触ることは無いので柔らかい金属線でも問題ありません。
2023/9 真鍮、銅線よりもピアノ線の方がよいことがわかりました。ピアノ線使用のマストを先にご覧ください。
接着剤や、具体的な使用法はこちらの記事で問題ないので、以降は真鍮、銅線→ピアノ線と読み替えてもらうとよいです。(コロコロ転がして、ゆがみをとる必要もないです)
金属線の太さ: ホームセンターで売っている中で使いやすいのは直径0.3mm、0.35mm、0.4mmです。
0.3mmは駆逐艦より小さい小型艦艇のマスト、0.4mmは中型艦以上のマストの基部や、大型艦の上部マスト、0.35mmはその中間などで使分けると良いです。
しかし過去作では、ここまでの使い分けまではできていませんでした。
同一の模型で、マストの金属線の太さが違う例です。足摺型給油艦で手前が2番艦塩屋、奥が1番艦足摺です。(とはいえ両艦で違う部分はないのです)手前が0.3mm、奥が0.4mm銅線です。一目で手前の0.3mmを使った方がシャープに見えると思います。
細い分加工がしにくいのですが中型~小型艦のマストトップは0.3mmで行きたいものです。この後、奥の足摺のマストも塩屋に合わせて0.3mmに交換しました。
事前準備: 金属線は巻いた状態で売っていますが、これは一定の長さで切断してストックしておくと使いやすいです。長いまま使用することは無いためです。
この状態でも少し曲がった状態になりますが、厚手の板を使って平滑な平面上でコロコロ転がすと直線にできます。シャー芯のケースが使いやすいです。
1/700艦艇模型マスト金属線化に使用する接着剤
金属線の接着には接着剤はプラモ用の接着剤はつかえません。プラモ用はプラスチック(ポリスチレン)を少し溶かしてくっ付けているためです。
そのため金属線同士や、金属とプラスチックの接着剤としては他ページ(展示台でワンランクup、艦艇模型の反り(そり)矯正)でも紹介しているゴム系接着剤G17(コニシ)を使っています。
使用できる時間が長く、接着後も微妙な修正が可能なメリットがあります。接着強度は程々ですがマストは強度不要です。
他にも瞬間接着剤や、2液硬化型のエポキシ系接着剤でも接着はできますがゴム系に比べると使いにくい点があります。
瞬間接着剤×: 瞬間的に強力に接着しますが、一度接着すると位置の修正ができない上、接着層が脆く、少しの力がかかると簡単に剥がれてします。また一旦剥離したあとの再接着が難しいです。
エポキシ系接着剤△: 2液を混ぜた後の使用するタイミングが難しいです。混ぜた直後な粘度が低く接着力もないのですが、少しづづ硬化がすすみ粘度、接着とも良いタイミングになる時を狙って使います。
ここから硬化が進むと今度は粘度が高くなりすぎ使いにくいです。硬化速度は温度の影響が大きいので使いやすい時間帯は季節により変わります。
ゴム系に比べて優れているのは接着強度です。しっかり接着します。しかし、マストの場合は強度が不要なのでエポキシ系接着剤の強みが生かせないです。
市販の汎用エポキシ系接着剤は、エポキシ/アミン硬化という反応を利用しています。管理人はこのタイプの接着剤に仕事で関わったことあり解説したい所ですが、本題とずれるのでこのくらいで。
番外、ハンダ付け。他の方の作例ではハンダを使っているもの見たことあります。電子工作のテクニックがある方はこの方法もよいかもしれませんが、私にはスキルは無いので試したことがないです。
1/700艦艇模型のマスト金属線化の工作例
実際の例として0.35mmの太さの銅線を、ゴム系接着剤G50(コニシ)で組み立てた例です。
フジミの空母信濃のマストです。スナップキット(接着剤不要)の艦NEXTシリーズなので強度確保のためマストが太めになっています。
金属線にした場合の精密度アップの状況がお判りいただけると思います。
これも同じくフジミの信濃(艦NEXTシリーズ)のキットです。金属線ならではの精密感が出せます。塗装時にも本サイトで多用している溶剤系のスプレー塗装であれば問題は出ません。
缶スプレー色見本by実模型もご覧ください。
13号型駆潜艇(タミヤ(旧グリーンマックス))です。小型艦艇では特に効果大きいです。後からまた登場します。
マストの部分金属化
マストを全て金属線化するのではなく、部分的に金属線に交換すると最小限の手間でそれなりの効果が得られます。
マスト先端部分が太すぎると違和感でますが、マスト基部は太くても気になりにくいためです。駆逐艦の大戦後期型や、巡洋艦以上の大きさの艦のマストトップ部分にこの方法が使えます。
写真はフジミの時雨(白露型駆逐艦)での変更例です。マスト基部の3脚部分はそのままで、上端部のみ金属線に変更しました。
細い方が格好いいと思う所のみ金属で、それ以外の部分はプラのままなので通常の接着剤を使ってラクに組み立てられます。
写真は重巡洋艦愛宕での変更例です。前部マストでは左右の張り出し部分のみ、後部マストでは後部マストの上部のみ変更しています。
1/700艦艇模型でのマストの金属線化は、最初はハードル高く感じるかもしれません。しかし材料も安価、意外と簡単で、手間の割には1/700艦艇模型のリアル度upの効果大です。気に入ったらぜひ試してください。
最後に紹介の衣笠の煙突周りの配管の方法については、ちょい改造1(煙突配管)で紹介しています。こちらもご覧ください。
金属マストの船体への直接接着法
ここで紹介するのは、金属線で作製したマストを直接船体に取り付ける方法です。この場合は、上で紹介のゴム系ボンドG17を使うよりは、エポキシパテを使った方が良いです。
プラのマスト設置用に船体に開いている穴は、金属線よりも太いです。これをエポキシパテで埋め、パテが硬化する前にマスト用に切断した金属線を差し込み組み立てます。
作例はタミヤの13号型駆潜艇です。キットは後期型ですが、これを前期型に改造しています。
利点は
・船体の穴も塞ぐことができる
・マストが固定されるので設置が簡単
・ボンドよりも平滑面が作れ、仕上がりがきれい
・作業できる時間が長い
・硬化後は強度が高い
とまさにいい事づくめです。パテ使用経験がある方には欠点はほぼないです。
使用しているのはタミヤの定番エポキシパテです。
艦艇模型の場合は、航空機等と違ってパテの出番が少ないです。そのため、パテを使った事が無い方には、使用にハードルを感じる方もいるかもしれません。
しかし2つの半固形物(主剤、硬化剤)を同体積で切り取り、練るだけです。皮膚が弱いかたはビニール手袋をした方がよいかもしれません。
硬化時間は品番や周囲の温度により変わりますが、ゴム系ボンドが乾いて使えなくなる時間よりは長いです。落ち着いて作業できます
これで、マストの金属線化の難易度がまた一つ下がったと思います。
パテを使う方法をマストの組み立てにも応用しましたが、うまくいきませんでした。十字部分に小さくちぎったパテを置くのですが、この部分のパテが塊状になり見栄えが悪いのと、強度が全くでないためです。
ここはゴム系接着剤の方がよいです。うまくいかなかった方法の紹介も価値あると思うので掲載しました。
下の写真の手前2本がパテで処理したものです。この後取れてしまい、奥2本同様にゴム系接着剤で付けました。