第1回目の艦NEXT信濃の紹介がご好評いただいております。ありがとうございます。
予告どおり、第2弾として軽巡洋艦多摩のレビューをします。今回は水上戦闘艦艇なので他の艦NEXTの戦闘艦艇(戦艦など)にも近いと思います。
この模型は、タミヤから出ている1942年時とは異なり1944年のレイテ沖海戦時です。艦尾に12.7cm高角砲を搭載し14cm単装砲2門を撤去しています。
また、カタパルトも撤去しその位置に25mm3連装機銃を増設しています。
この模型は接着剤、塗装不要でも組み立てられる初心者向けキットですが、パーツ、設計図(あらかじめ最後まで見た方が良いです!)を確認し、最初にどのような方針で作製するか決めて組み立てた方が良いです。それにより作り方が変わるためです。
その意味では通常の模型に慣れている方には注意を要する模型です。それを管理人の作製顛末と共にご紹介します。
組み立て方の選択肢としては
1. 完全無塗装、接着剤不使用で組み立てる(メーカー推奨)
2. 他の模型同様塗装/接着前提で組み立てる
3. 2にプラスして通風筒などのボーナスパーツも使い高精細模型とする。
4. 1,2の折衷型とする(模型の成型色を生かし、新たな塗装を最小現とする。)
の4択になると思います。
結論は、
当サイトをご覧になっている中級(以上)モデラーのあなたには2または3をお勧めします。
管理人は当初4で作りましたが、市販缶スプレーで色を合わせようとしたところ、うまく合わずにひと悶着あり、最終的にほぼ2になりました。
1.の完全無塗装を前提とした模型ですが、管理人が艦艇色を塗装したのは以下の理由です。いずれも他の艦艇模型とのレベル合わせのためです。
・はめ込み時の強度確保のためマスト、12.7cm高角砲砲身が太すぎる。これを金属線や別売りパーツに交換のため
・艦橋窓枠が透明パーツだが、他コレクションにあわせ塗装することとしたため
・レーダーをエッチングパーツに交換したため
そのため、前部/後部マスト、レーダー、窓枠がある艦橋、および12cm高角砲と14cm単装砲は船体の成型色に近い(ように見えた)横須賀工廠艦艇色32(クレオス)で塗装し、これ以外の艦艇色部分はパーツ成型色を活かすことで素材を活かした作り方にしました。
と、ところが、船体部分の成型色と、色が近い缶スプレー色の横須賀工廠艦艇色32でも色の差が結構あり、組み立てると明るい船体色に暗い艦橋、砲塔、前/後部マストが乗っかり、マスト間の3本煙突が船体と同じ明るい色、というちぐはぐな模型となってしまいました。
缶スプレーの色は、缶スプレー色見本by実模型で紹介の色見本模型で近い色を選びました。が、実際には横須賀工廠艦艇色32と呉海軍工廠色SJ1の中間的な色でした。そのため、上のようなちぐはぐ艦になりました。
この回避には、エアブラシを使用して極力同じ色を調合/再現するか、最初から艦艇色部全体をスプレー塗装するのどちらかになります。
今回は <時すでに遅し> だったので成型色をそのまま使った船体、煙突等に缶スプレーから出した塗料32番をドライブラシしてリカバリーしました。
完全ではありませんが、これで多少マシになりました。大戦末期的なヨレヨレ感が出て良かったと自分に納得させて手打ちです。妥協が重要です。
このように迷走しました。これを防ぐために、最初に作戦を立てて1~3から選択し、4の折衷型を選択する場合には、成型色に合わせたエアブラシをお勧めします。
以上、缶スプレー使用の中級者の方(管理人相当)は結論の通り、2まはた3をお勧めした次第です。下の写真はこの方法で完成した状態です。
艦艇色以外は、
- リノリウム: ウッドブラウン43(クレオス)の缶スプレー使用。成型色では茶色が濃く黒っぽく見ます。他の艦艇ではホワイトボードマーカー“ポスカ”の茶色で塗っているのでその色に近い缶スプレーを選んでいます。
- ガンメタル: タミヤエナメル X-10 錨、機関銃
- パフ: タミヤエナメル XF-57 艦載艇の木甲板
- 黒灰: タミヤエナメルのフラットブラックと艦艇色の調合品 煙突上部
- 銀色(探照灯レンズ部)、金色(菊花紋章)ペペオジャパンのペン
〇キットの良い点
1. 塗装不要な梨地処理。この処理のおかげで完全未塗装でも十分にイケるクオリティーです。タミヤの多摩の模型と比べると良く判ります
2. 船体形状。上甲板の中心線が水はけのため僅かに高くなった構造や、艦後部の艦載機作業台の支柱などの表現のレベルが高いです。接着剤不要ですがリノリウム甲板部品の上甲板と船体との隙間もほとんどでません。
3. 接着剤を使わなくて済むのは、組み立てが早くてラクです。溶剤臭もないですし。(管理人は職業柄、有機溶剤の使用経験が長くラリっています。適度な溶剤臭は好きですが、こういった人間は少数派と自任しています。)
4. 設計図。最近のフジミ模型共通ですがパーツの説明、解説が丁寧な点。大判で私のようなローガンにも優しいです。船体図は模型実物大になっており大変見やすいです。
5. ボーナスパーツ付属。管理人は全部はつかいませんでしたが、好みに合わせて高精細化できます。
6. 特殊パーツ
後部魚雷発射管の設置開口部を塞ぐカンバスのパーツは珍しいです。今回は使いませんでしたが、カンパスで覆われている写真もあり、これを再現できます。北方迷彩の多摩に似合いそうです。
通常後ろ向きに設置される14cm2番単装砲が大仰角をかけて前向きに設置できるパーツもついています。解説によると荒天時の配置だそうでこれも他キットでは例がないです。
さらに単装砲では艦首側シールドには波除けの張り出し付き、艦尾側には張り出し無しと芸が細かい上、単装砲上に設置する13mm機銃もボーナスパーツとして付属しています。このパーツはつかいました。
〇キットの問題点
- 細かい必須パーツ。通風塔(N3)はピンセットでつまむのがやっとですが、設置用の穴が甲板パーツに開口済みなので必ず使います。はめ込み式のためパーツと穴の大きさがピッタリすぎ設置にも苦労しました。ピンパイスで穴径を広げ接着した方が良いです。
- 12.7cm高角砲の砲身が太すぎ。組み立て時の強度確保のためでしょうが、最新模型ではツライです。14cm単装砲の出来が良いだけに謎です。
- ズバリ価格。フルハル艦底、多色成型なので価値は十分なのですが、ウオーターライン派には高価です。実売価格ではタミヤの多摩が2~3隻購入できます。
ただ、総合的に見ると精細で非常に良いキットです。管理人は通常リノリウム部分は、組み立てたあと、甲板部分の凹凸を気にしつつもササっと茶色でペン&細筆で塗装してしまいます。(サクサク作れる塗装術を参照ください。)
そのためリノリウム色を塗装済みの甲板に艦艇色の部品を組み込む作り方は新鮮でした。出来上がりも、いつもの手抜き塗装とは違いカチッと仕上がります。
マスキングで甲板の細かい部分を塗り分ける手法もありますが、同クオリティの模型がかなり楽に組みあがります。
今思えば、キット外のパーツを使った部分のみ艦艇色で塗装すれば、船体は未塗装でも良かったかもしれません。
マストやレーダーは小さい部品なので目立たないですし、12.7cm高角砲は後から換装されたものなので色が違っても良いと割り切るとか。
他には、塗装の必要性が少ない船体パーツなどは、スプレーで塗りつぶさずにさっと吹くだけにするのもアリかもしれません。
次は今回の経験を活かしつつ、駆逐艦秋月/初月2隻セットの紹介を予定しています。艦NEXTの秋月は多摩同様、先行の模型にはないレイテ沖海戦時がモデル化されているためです。
最後に情景風写真です。撮影方法、画像加工方法は情景写真への道(停泊艦)をご覧ください。
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