サクサク作れる塗装術

 1/700艦艇模型は多数のコレクションができることが魅力の一つです。そこで短時間で多数の1/700艦艇模型を組み立てる際の、特に塗装方法を紹介します。

 なるべく全体を組み立てた後、缶スプレーにより塗装する方法です。塗装手順は以下の通りです。すごいテクニックはありませんのであしからず。

1)1/700艦艇模型の組み立て(9割型完成させる)
2)艦全体のスプレー塗装
3)上甲板(木甲板やリノリウム)の塗装
4)艦載艇、煙突上部、機関砲、菊花紋章等の塗装、接着
5)艦載機の搭載
6)ウエザリング

ここで例として紹介したのは軽巡洋艦名取(タミヤ)です。

1/700艦艇模型の組み立て時の塗装

 私の艦艇模型の作り方ではエッチングパーツ含め全体の9割方は塗装前に組み立てを終えます。

 木甲板やリノリウム部分の上甲板の塗装を丁寧に行おうとすると砲塔、艦載艇、爆雷投射機等の小物類は上甲板を塗装後に接着したくなりますが、ここは割り切って先に組み立ててしまいます。

 ボートダビットは接着部の色と、接着したあとの塗り易さによりケースバイケースで判断します。

 ”塗れない所は、見えない所”こんな名言があったような。。

タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
艦艇模型の塗装方法について
エッチングパーツ含め全体の9割方は塗装前に組み立てを終えます。
塗装前に殆ど組み立ててしまいます

スプレー塗装

 軍艦色のスプレーは多種出ています。Mr. Color Spray (GSI クレオス)からは、32(横須賀海軍工廠色)、SJ1(呉海軍工廠色)、SJ2(佐世保海軍工廠色)が販売されています。

 また、TAMIYA Color(タミヤ)からは、TS-66(呉海軍工廠色)、TS-67 (佐世保海軍工廠)、TS-99(舞鶴海軍工廠色)があります。

 それぞれに色が微妙に違うのでこれらの塗り分けだけでもバリエーションが出せます。缶の蓋の色も少し違うのがわかると思います。単艦ではわかりにくいですが、使った色を変えた艦を並べると違いが良くわかります。

 6色すべてを同じ艦に塗った例も”スプレー缶色見本by実模型”で紹介しています。実際の色見を参考にしてください。

Mr. Color Spray (GSI クレオス)32(横須賀海軍工廠色)
SJ1(呉海軍工廠色)
SJ2(佐世保海軍工廠色)
Mr. Color Spray (GSI クレオス)左から32(横須賀海軍工廠色)、SJ1(呉海軍工廠色)、SJ2(佐世保海軍工廠色)
TAMIYA Color(タミヤ)
TS-66(呉海軍工廠色)
TS-67 (佐世保海軍工廠)
TS-99(舞鶴海軍工廠色)
TAMIYA Color(タミヤ)左からTS-67 (佐世保海軍工廠)、TS-66(呉海軍工廠色)、TS-99(舞鶴海軍工廠色)
摩耶 SJ2(佐世保海軍工廠色)
鳥海 SJ1(呉海軍工廠色)
Mr. Color Spray (GSI クレオス)
左 摩耶SJ2(佐世保海軍工廠色)、右 鳥海SJ1(呉海軍工廠色)Mr. Color Spray 
沢山並べても、単調になりにくいです。

 エアブラシ、サーフェサーは時間短縮のため使っていません。インジェクションキットに油性のスプレーを塗るならほぼ問題ないです。ただし、レジンキットの場合は別です。

 (余談ですが、私は塗料の開発に携わった事があります。塗料と基材(”プラモデルのプラって?”で紹介のポリスチレン)の関係も今後解説したいです。)

 塗装の際には最初のスプレーからの飛沫は粒子が安定していないので塗装対象にかからないようにします。

 艦を普通に置いた状態だけでスプレーをすると塗り残しが出るので、左右に寝かせた状態でも塗装します。艦首と艦尾の垂直面も塗り残しが出やすいので要注意です。

 最近の模型はモールドが細かいので、一方向より厚塗りせずに艦の置き方を変えて、各方向から間欠的に(シュッ-シュッと)薄く塗る方が良いです。

 すると、表面がややマットな塗装面となります。またお財布と環境にも優しいです。紹介した油性の缶スプレーだと天気のよい日ならあっという間に乾燥します。

 要するに、シュシュッと吹き付けてパッと乾燥させて、ハイ終わりです。

タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
模型をまずは普通にスプレー塗装
模型をまずは普通にスプレー塗装
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
艦を左右に寝かせた状態でも塗装
艦を左右に寝かせた状態でも塗装し、塗り残しを無くします。
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
全体をスプレーで塗装した状態
作業時間5分でここまで

 大型艦の場合には、塗装中にスプレーが空になるリスクがあるので予備が1本あると良いです。また、どの色で塗装したかを艦の裏側に記録しておくと、修理や部品の交換時に便利です。

 色の差がわずかなので後から解らなくなることがあります。色の判別のためのカラーチャートの作製法も”スプレー缶色見本by実模型”で紹介しています。

 乾燥時間を除くと、実作業は今回紹介の軽巡洋艦なら5分(1分×5回)程度です。

上甲板の塗装(木甲板、リノリウム)

 缶スプレーで塗装すると、耐摩耗性が高く模型に密着した塗膜ができます。そのため、乾燥してしまえば、ラッカー系の塗料以外では即重ね塗りができます。

 木甲板の場合はタミヤカラー(エナメル系)を使っています。XF-21(スカイ)、XF-55(デッキタン)、XF-57(バフ)、XF-59(デザートイエロー)のどれか1色をベースの色として使い木目のモールドに沿って筆塗装します。

 スプレー塗装とは異なりどうしてもムラがでますが、木甲板なので気にしません。なんと言っても手本が木ですから。

 その後、他の類似色を細い筆で木目に沿ってフリーハンドで2~3mmの長さで塗り、木甲板的な質感を出します。写真の通りムラが大きいですが、遠くから見るといい感じになります。

 雑誌の作例では、木甲板を複数の色で極細の短冊状のテープによりマスキング塗装しているケースありますが、そうした高度なテクニックは使っていません。(というかできません。。) 

 空母の飛行甲板は特殊な構造、塗装パターンなので水上戦闘艦と違う方法で塗装した方が良いです。詳しくはサクサク塗装術(空母編1)で木甲板の省力塗装方法を紹介しております。ご興味ありましたらご覧ください。

 また、戦艦、重巡洋艦はここで紹介の軽巡洋艦よりも艦橋~煙突付近の部品密度が高いです。これらに特化した塗装方法についてはサクサク塗装術 重巡、戦艦をご覧ください。

 ここでは、大型艦の2隻並行塗装についても紹介しています。

タミヤカラー
XF-21(スカイ)
XF-55(デッキタン)
XF-57(バフ)
XF-59(デザートイエロー)
ウオーターラインシリーズ模型の木甲板の塗装方法。
航空母艦 赤城
Aircraft Carrier Akagi

ドアップだとムラが目立ちますが普通の距離だと気にならないのでは
(フジミ、空母赤城)
空母の飛行甲板は特殊な構造、塗装パターンなので水上戦闘艦と違った方法で塗装した方が良いです。サクサク塗装術(空母編1)で木甲板の省力塗装方法を紹介しております。ご覧ください。

また、迷彩塗装の空母の塗装手順については、サクサク塗装術(迷彩空母)もご覧ください。

 リノリウムの場合はPOSCAという水性のポスターカラーマーカーを使います。甲板に突起物がない場合はペンで直接塗り、突起物や塗装の障害になるものがある場合には、ポスカをビニールの上に少量出して、筆塗りをします。

 筆は少し良いものを使っています。高い筆の方が筆の先のまとまりが良くきれいに塗れます。リノリウム色は基本この色しか使いませんが、下地の艦艇色の違いによりリノリウム色も違って見えます。

ポスカ 茶色
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
全体をスプレーで塗装した後、ポスカ茶色でリノリウムを塗った状態
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
全体をスプレーで塗装した後、ポスカ茶色でリノリウムを塗った状

 組み立ててから、リノリウム、艦載艇の塗装をしていますが、違和感ないと思います。スプレー塗装後から15分程度でここまで作業進みます。奥まった所も気にせずバンバン塗っていきます。”塗れない所は、見えない所” ですから。

艦載艇、煙突上部、機銃、菊花紋章等の塗装、接着

 単一色の軍艦ではどうしても色が単調になりがちですが、艦載艇、機銃などを塗り分けることで、模型が単調にならないようにします。

 説明書ではキャンバスはフラットホワイト、煙突上部はフラットブラックで指定されている例がありますが、船体色に等量程度の白や黒を加えることで、色の変化が極端になり過ぎずに落ち着いた感じを出せます。

 菊花紋章はアーティストマーカー(ペベオ・ジャポン株式会社)の金色で塗っていますが、金属光沢がギラリと強く良いアクセントになります。このメーカーの銀色も探照灯レンズや、搭載機のキャノピー塗装に愛用しています。

アーティストマーカー(ペベオ・ジャポン株式会社)の金色、銀色ペン
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
ボートダビット、煙突上部を接着した状態

 ボートダビット、煙突上部を接着しました。所要時間約10分です。これで本体はほぼ完成です。塗装前の模型から30分でここまで来ます。

 私のような土日モデラーでもこれなら量産可能です。缶スプレーに感謝!。あとは艦載機を乗せ、好みに応じてウエザリングです。

艦載機の搭載

 艦載機は別にできるだけ沢山(一作業で10機以上)作り、ストックしておきます。流れ作業で、機体裏面の明灰白色をスプレー塗装し上面色はタミヤカラーのXF-5(フラットグリーン)を筆塗り、日の丸はペン塗りです。

 デカールは使いません。翼前縁の敵味方識別色はXF-4(フラットオレンジ)を爪楊枝を筆代わりにして色を乗せます。

 空母用の艦載機では、ウオーターラインの標準品ではなく、フジミ模型の別売り品を使っています。理由は透明樹脂で成形されており、且つコクピットのキャノピーが別部品になっているので、透明のままキャノピーを接着するといい感じの仕上がりになるためです。

 下で紹介した水上偵察機はウオーターラインシリーズの巡洋艦以上の大型艦に同封されている大型艦兵装セットのものです。キャノピーはーティストマーカー(ペベオ・ジャポン株式会社)の銀色で塗装しています。

 艦載機作製は意外と時間かかりますが、搭載するとグレイが多い艦の中では良いアクセントになります。なるべく効率化して作り置きし所定数のせると良いです。

 最近作り方を少し変え、省力化のためランナーに部品が付いた状態でなるべく組み立て、塗装工程をすすめるようにしています。詳しくは効率up!時短組み立て、もご覧ください。

1/700模型の艦載機の塗装方法
1/700模型の艦載機の塗装方法
機体裏面の明灰白色をスプレー塗装
1/700模型の艦載機の塗装方法
上面色を筆塗り後、キャノピー、日の丸、迷彩、(判りにくいですが)敵味方識別帯を塗装

ウエザリング

 墨入れはタミヤのPANEL LINE ACCENT COLORを使っています。エナメル系塗料なので下地に影響はないです。何色かありますが船体の墨入れにはブラック、ダークブラウン、ブラウンがお勧めです。

 また船体の立体感を出すために、タミヤのウエザリングマスター(日本海軍艦艇用)のグレイを使って明暗を出すようにします。

 これは密着の良い粉末の着色材です。缶スプレーの艦艇色よりも明るいので凸部を中心に船体全体に色を乗せると、外面が均一でなく鋼板が歪んだ感を出せます。

 最後にウエザリングマスターのアカサビ色や、茶色のペンで錨周辺や、ボートダビットの周辺など、錆が発生しそうな所に色を乗せます。

 ウエザリングはやり過ぎないよう程々にしています。この工程も慣れれば10分ぐらいです。

 タミヤのウエザリングマスター(日本海軍艦艇用)は限定発売だったらしく、最近は店頭で見ていません。運よく店頭在庫をみつけたら確保しておくと良いでしょう。(タミヤ様、再販希望です)

タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
ボートダビット、煙突上部を接着した状態
タミヤウエザリングマスター
タミヤ TAMIYA
軽巡洋艦 名取 
Light Cruiser Natori
完成品
完成しました。塗装作業時間は1時間弱です。

 完成後の写真は軽巡洋艦名取のページをご覧ください。

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