艦艇模型の反り(そり)矯正

ウオーターライン模型の反り矯正法

 本サイトで紹介の1/700艦艇模型は、ウオーターライン(喫水線)なので海上に浮いた状態を再現したものです。そのため、船体が海面に密着するのが理想です。

 しかし、船体は前後に長いため、僅かな成形のゆがみでも艦首/艦尾部分や、艦中央部が海面より浮いた状態になりがちです。

 この状態で飾ったり、写真を撮ったりするとオモチャっぽく見えます。

 ここでは展示台のページで書いた方法の内、磁石を船体に埋め込み、設置面(海面板や展示台)に鉄板を敷く方法による艦艇模型の反り(ソリ)矯正策を紹介します。

 磁石を鉄板に接着させることで、反りを修正するので設置面(海面)または展示台がいります。艦艇模型単独で矯正する方法ではありません。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)での反り矯正の実例

 写真は、ここで紹介した1/700艦艇模型(ウオーターライン)での反り防止の有無の比較です。

 ケース① 艦首/艦尾が設置面より浮いた状態や、ケース② 艦中央部が浮いた状態を、浮いた部分の船体内部に磁石を設置することで矯正したました。海面板の下には鉄板を敷いています。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)が反った状態
ケース① 反り修正前(艦首、艦尾)Before
1/700艦艇模型(ウオーターライン)の反りが矯正された状態
ケース① 反り修正後(艦首、艦尾)After
1/700艦艇模型(ウオーターライン)が反った状態
ケース① 反り修正前(艦首拡大)Before
1/700艦艇模型(ウオーターライン)の反りが矯正された状態
ケース① 反り修正後(艦首拡大)After
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型が反った状態
ケース② 反り修正前(艦中央拡大)Before
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型のの反りが矯正された例
ケース② 反り修正後(艦中央拡大)After

 写真を見比べていただけると効果は効果は一目瞭然だと思います。やり方は簡単です。

1/700艦艇模型の反り(そり)矯正で使用する磁石

 磁石は100均ショップで売っている、超強力マグネット(ネオジム磁石)を活用しています。艦艇模型に適したサイズでは直径6mm(100円で8個入り)、直径13mm(同4個入り)です。

 大型艦の場合は16mm(2個入り)、23mm(1個入り)も使えます。しかし、磁力あたりのコスパを計算すると13mmのものが最高でした。

 超強力と銘打っているだけあり、うまく設置すると船体の反り、歪みを矯正し設置面に密着させることができます。

 余談ですが、同じ磁石の大きさでも表示磁力はダイソー品の方が他社品よりも20%程強いです。触った感覚ではわかりませんが。。いずれにせよ強力な磁石が100均で買えるのはホント助かります。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する100均で買える強力磁石(6mm径と13mm径)
100均で買える強力磁石類 左)ダイソー、中)キャンドゥ、右)セリア

 むき出しの磁石ではなく、プラスチックのカバー、取っ手がついた磁石ではより小さい5mm径のネオジム磁石も売っています(ダイソー、セリア)

 数が6個入りと6mm径磁石よりも少ない上、プラスチック部分を壊して中の磁石を取り出す必要あります。しかし、小型艦の艦首に設置する場合にはこの1mmの差は大きいです。ここぞという時に使いましょう。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する5mm径の小型磁石が入ったマグネット留め具
5mm径の小型磁石が入ったマグネット留め具

 最近(2021/2)セリアから長方形超強力マグネットなる磁石がでているのを見つけました。注目すべきは形よりも厚みで、円柱型の磁石よりも薄く駆逐艦の艦尾側や、海防艦にも入るのがポイントです。

 惜しいのは短辺でも9mmあることです。もう一サイズ小さいと船体の端に入れられるのですが。

 ただ、歪みが始まるポイントにうまく設置できれば十分有効です。この磁石が出たのもここ最近以内だと思いますが、これ以下の厚みと幅で8個入りの小型ネオジム磁石がでてくれれば言うことないのですが。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する100均で買える強力磁石(角形磁石)
薄型磁石(2021/2月追記)

 これは、最近3個入になってしまいました。(2023/8)。円安なので仕方がないです。。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する100均で買える強力磁石
厚み比較
一番左が直径6mm磁石、一番右が角形磁石。厚みが薄いことにご注目。
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する100均で買える強力磁石(6mm径と13mm径)

 ダイソーで 直径6mm(9個入り)、直径13mm(5個入り) の磁力そのまま、増量タイプを見つけました。これはお得です。(2021/9更新)

 残念ながら磁石の個数が元に戻っていました 直径6mm(8個入り)、直径13mm(4個入り)。円安の影響でしょうか。(2022/4)

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する100均で買える強力磁石(10mm径)

 セリアで 直径10mm(6個入り)を見つけました。6mmでは磁力が足りないが13mmは入らない場合に使えそうです。(2021/12更新)

 しかし、最近みなくなってしまいました。(2023/1更新)

 と思っていたら、5個入りになり再販されました(2023/10)。円安なので仕方がないです。。貴重な大きさなので売っているだけ良しとすべきですね。

1/700艦艇模型船体への磁石の設置

 基本は歪みが大きい部分に集中的に設置します。

 ケース①の艦首/艦尾の歪みが大きい場合は、船体両末端に6mm径磁石を入れます。駆逐艦以下の小艦艇の場合はこれで反りが矯正できることが多いです。

 巡洋艦以上の中型の艦の場合で6mm磁石だけでは歪みが取れない場合は、船体幅が十分に広くなった場所に13mmを設置します。

 船は一般に船首の方が幅が狭く、特に艦の速度が速い巡洋艦の場合は、13mm品が入る幅になるのはかなり船体中央寄りになってしまう場合があります。

 その場合は6mm品を複数使う、10mm品を使うなどの工夫をしてみてください。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置例
6mm径磁石の使用例(駆逐艦)
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置例
6mm径、13mm径の併用例(軽巡洋艦)

 ケース②の艦中央部分が浮き上がる場合は、艦中央部に13mmの磁石を1~2個入れます。

 歪み防止だけが目的の場合にはこれでも良いのですが、展示台(展示台でワンランクup)の項目参照ください)に設置するときは、船体中央1点での固定では台から外れる恐れがあります。

 艦首、艦尾にも固定用に6mm磁石を入れた方が良いです。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置例
6mm径、13mm径の併用例(輸送船)

 船底面と磁石の面の高さが同一(面一:つらいち)になるように、丁度良い高さに設置するのが歪みを効率的に除くコツです。

 磁石の位置が船体奥に深く入り過ぎ、船底の面と離れると急激に接着力(磁力)が弱くなります。

 磁石の高さを合わせるためには、プラ板や木の板を磁石の下に敷いて高さ調整をします。このように異なる材料を接着するときは、ゴム系接着剤(G17:コニシ株式会社)等がお勧めです。

 プラモ用の接着剤では磁石を接着できません。また、2液硬化型エポキシ接着剤では接着が強力すぎ、硬化後では修正できないのでご注意ください。

 写真は磁石の設置高さを調整するために、木の棒でかさ上げした磁石です。木の長さを変えたものをあらかじめ複数作っておくと模型作製が中断されずに良いです。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)の反り防止用に使用する磁石の設置準備例

 下の写真の艦尾(右側)の長方形の磁石に注目ください。これが上で紹介のセリアにある薄型ネオジム磁石です。艦尾末端には入りませんが強力なので十分に有効です。

 艦尾末端のナットは薄型磁石を入れたため不要となりましたが、除いていないだけです。例にしているのは駆逐艦橘(ピットロード)です。(2021/2)

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
艦首は直径6mmの円形の磁石、艦尾付近は9mm幅の薄型磁石です(駆逐艦橘、2021/2追記)

 駆逐艦より小型の海防艦に設置した例です。厚み的はギリギリ入ります。ホントこれは助かります。海防艦鵜来型に入れた例です。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
角形の薄いネオジム磁石の設定例(海防艦鵜来型)(2021/02追加)

艦底板への磁石設置用の穴あけ

 模型に船底の板を接着してある場合はリューターで穴をあけて磁石を設置します。力や振動がかかり模型破損の危険があります。

 ボートダビットや機関砲などの細かい部品が落下する事が多いので、部品が落ちてもわかりやすい所で作業することをお勧めします。

 こうしたトラブルを避けるためにも組み立て前の船体加工時に磁石用の穴を加工しておくことお勧めします。

 事前に加工すれば、リューターを使わなくてもニッパーや小型ノコで穴を空けることもできます。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
リューターでの穴あけ例(軽巡洋艦)
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
あらかじめ磁石用の穴を加工した例。給油艦塩屋(ピットロード)

 組み立て前ならば、リューターよりもパワーのある電動ドリルで穴を空けることもできます。

 下の写真はハセガワの重巡衣笠、加古の艦底板(上2枚)と、シールズモデル戦艦富士の船体一体型の艦底(下)です。

 重巡の艦底板は約1.5mmと厚く、リューターで穴を空けるのは一苦労です。こうした板はドリルで穴を空けると楽です。

 工程は以下の写真の通りです。複数隻まとめて、天気の良い日に一気に片づけます。左上で1か所空きかった穴はリューターで頑張っていたが、時間がかかるので断念した跡です。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
ドリル刃が貫通しても良いように、木の板にはりつけておきます。固定はしっかりします。
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置穴用のドリル
DIY用ドリル。2~3mm径のドリル刃は100均でも買えます
1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
穴を空けます。大体でOK

 リューターと比べてパワーが段違いなのですぐに穴を空けられます。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)模型の反り防止用に使用する磁石の設置準備例
丈夫なニッパーで切り取り、簡単にヤスリなどで整形します

1/700艦艇模型の反り(そり)防止用の海面板

 海面板は上から
①厚さ1mmの硬質塩化ビニール板(アクリルサンデー)スモーク透明
②水色の模造紙
③鉄板
 の順に重ねています。磁力を効率良く働かせるために鉄板の位置をなるべく艦に近づける、鉄板が上から見えない、海面部分は透明性と半光沢性が欲しいのでプラスチックとしたい、この3点を満たす配置です。

 1/700の艦艇模型で最大級の大和型戦艦は、模型水線長が約38cmあります。鉄板の剛性により模型の反りを直すので、一定の厚みがありつなぎ目の無い1枚板の方が良いです。

 そのため、一辺が40cm以上ある鉄板の使用をお勧めします。

 当サイトではこの条件を満たすホワイトボード用鉄板(400×300×0.23mm)を使っています。表は白、裏も樹脂コーティングされており、鉄の欠点であるサビへの耐久性は大丈夫だと思います。

 ブリキ、トタンも鉄板にメッキをしたものなので選択しても良いです。

 ホームセンターで売っている、アルミ、銅は磁石にはつかないのでダメです。ステンレス板もSus304など磁石に接着しないものが多いので選ばない方が無難です。

1/700艦艇模型(ウオーターライン)を設置する海面板の積層順
左から①プラスチック板、②水色模造紙、③鉄板

補足、注意点

① 磁石の設置は、模型を作る前の状態に終えてしまうのがベストです。作製後では、磁石を設置している間に模型を破損させてしまう場合があるからです。

 特に艦底板に穴をあける時に、力や振動がかかり危険です。しかし、管理人の場合は、この方法を思いついたのが最近なので完成した模型を恐る恐る再加工しています。

② 海面板や展示台から剥がす場合は、模型を垂直に持ち上げるのではなく、鉄板が入っていない場所まで水平方向にずらす方が良いです。磁力による接着力が強力なためです。

③ 駆逐艦以下の小型艦に設置の場合は、磁石の厚みが厚すぎ、船底面から磁石がはみ出してしまう場合があります。この場合はリューターで甲板面の裏から削り、磁石が入るスペースを作ります。

 ただ、模型をダメにしてしまうリスクがあるので慎重に作業してください。

 2021/02更新。上で紹介の通り、長方形の薄型ネオジム磁石を見つけましたのでこれで駆逐艦、海防艦等の一部艦艇では問題解消可能です。

 潜水艦などとても磁石を入れられない厚みの場合は、より薄い鉄製のナットを入れる方法も紹介しています。
  *磁石が入らない小型艦艇での反り矯正法* 次ページ
 (2021/2更新)上に記載の通り、セリアで見つけた長方形薄型のネオジム磁石を活用すると、駆逐艦、海防艦には対応できることが解りました。残るは潜水艦の対応です。

 以上、ウオーターライン模型の船体の反り、歪みがない状態にできます。手間に比べて効果が大きいので、ぜひ試してみてください。

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