聖地巡礼 小名浜港編

小名浜港 汐風、澤風

駆逐艦汐風、澤風  Onahama port Shiokaze and Sawakaze

 2020年11月28日(土)に、峯風型駆逐艦2番艦澤風8番艦汐風が沈船防波堤として使われていた福島県いわき市にある小名浜港を訪問してその史跡をめぐってきました。

 私が単身赴任で住んでいるアパートから約5km、自転車で20分ぐらいの距離なので訪問というと大げさですが。

 いずれの艦も大戦を生き残り、終戦時は澤風は対潜用の兵器を搭載し対潜実験艦(対潜学校練習艦)として横須賀で、汐風は回天(潜水型特攻兵器)搭載艦として日本海で活動していたそうです。澤風は戦後復員船として元日本占領地から日本人を帰国に貢献しました。

 その後2隻は小名浜港に移動の後、沈降着底させコンクリートで固着して防波堤として活用し、現在でも汐風は防波堤の下に埋まっています。一方の澤風はより沖側に防波堤が移動された際に撤去されたそうです。

 一から防波堤を作るのに比べ工期も短く安価なため、大戦を生き残った艦の内、古いまたは損傷のため賠償艦にできない艦はこのような活用をされました。

 小名浜港の澤風はこうした活用がされた第一号で、その後全国で数か所で同じ方法での活用が行われました。

 中でも戦艦大和が撃沈された坊ノ岬沖海戦で生き残った秋月型駆逐艦の涼月、冬月が埋められている福岡県若松港が有名です。

 戦後の資材、費用が乏しい中で応急的に港を保持するための手段として有効でしたが、その後の経済成長に伴い新たな堤防を作る上で撤去された港も多いです。

 その中で、今でも沈船防波堤が残る小名浜港は貴重な存在だと思います。 

汐風が埋設された岸壁

 小名浜港にある観光市場の“ららみゅう”の50m程海側で、一見すると普通の防波堤の下に汐風が埋設されています。汐風、澤風が埋設された場所を示す案内版も設置されています。

 この場所は汐風が埋められた場所で案内板設置位置が汐風の艦尾の真上です。案内版は新しく、このような伝承が行われていることが個人的にも非常に嬉しいです。

駆逐艦汐風が埋設された岸壁、いわき市小名浜港

 案内板(艦尾)から汐風艦首方向(南側)を望む。といっても案内版がなければ船が埋まっていることは判りません。右の海上保安庁の巡視船は“なつい”です。左の自転車は私の愛車です。

駆逐艦汐風が埋設された岸壁の案内版、いわき市小名浜港
汐風埋設状態の詳細
駆逐艦汐風が埋設された岸壁、いわき市小名浜港

 案内板から澤風が埋まっている方向(東側)です。遠くに見えるタワーがいわきマリンタワーで、そのすぐ近くに澤風のタービンが記念碑として設置されています。

駆逐艦汐風が埋設された岸壁、いわき市小名浜港

 案内板から西側です。ドーム状の建物が水族館アクアマリン福島です。その横に停泊しているのは海上保安庁の巡視船は“あぶくま”です。

 なつい、あぶくまとも東北地方の河川の名前でもあります。(このサイトをご覧になっている方は阿武隈(あぶくま)についてはご承知かと)。夏井川はいわき市内を流れている川で紅葉時期は夏井川渓谷が有名です。まだ訪問できていませんが。(2023/5訪問しました)

駆逐艦汐風が埋設された岸壁の案内版、いわき市小名浜港
案内版の沈沈船防波堤を示した地図です
駆逐艦汐風が埋設された岸壁の案内版、いわき市小名浜港
解説文です。
駆逐艦汐風が埋設された岸壁の案内版、いわき市小名浜港
解説文英語バージョン。インターナショナルでいいですね。
駆逐艦汐風が埋設された岸壁の案内版、いわき市小名浜港
図面も載っていますが、竣工時でも最終時でもない状態ですね。兵装配置から予測するに1944頃の状態でしょうか。

澤風が埋設されていた付近

 海沿いを少し東側に移動すると漁港になります。第31日東丸、北勝丸という大型の巻き網漁船が沖の岸壁に停泊していました。その岸壁の手前が澤風が埋設されていた場所付近です。

 1948年(昭和23年)に埋設されてから17年後の1965年(昭和40年)に澤風はそこから撤去されました。1920年(大正9年)に竣工してから45年間のお勤めでした。

 このとき撤去されたタービンが記念碑として三崎公園に残されています。そこが次の目的地です。

駆逐艦澤風が埋設されていた付近、いわき市小名浜港
北勝丸
駆逐艦澤風が埋設されていた付近、いわき市小名浜港
第31日東丸
駆逐艦澤風が埋設されていた付近、いわき市小名浜港
大型漁船が並ぶ漁港です。後ろがポートタワーです。

 多数の漁船が停泊していましたが、上の第31日東丸、北勝丸含めて大型の巻き網漁船が多かったです。日東丸、北勝丸は大型のデリックを持ち、艦尾のスロープに小型船を載せているため、一見漁船には見えないです。

 私のような船好きには楽しい場所です。釣り人も多く釣果をのぞき見したところ、ハゼのようでした。この時期(11月末)なので立派な落ちハゼでした。

澤風の蒸気タービン

 更に東にある三崎公園に行くと、ひときわ目出つポートタワーがあります。その正面(海に向かった方向)向かって左側方面の100mぐらいの場所に澤風の蒸気タービンの部品が展示されています。

 1965年に澤風が小名浜港から撤去された際に出た部品ですがスクラップとして売られる直前に有志により保存されました。

 このような艦艇の一部が残っている例は少ないと思います。ましてや機関のパーツなど皆無ではないでしょうか。

 雨曝しになっているため全体がサビていますが、原型は良くとどめています。大正時代の建造にも関わらず、タービン翼の加工が精密で当時最高の技術で作られたものであることが想像されます。

 なにせ40ノットの当時最高速度をたたき出した峯風型のタービンですから。産業遺産的にも重要なものではないでしょうか。

 屋根が付いている場所だとさらに良いのですが、設置された経緯を考えると本物が保存されていただけでも素晴らしいです。ご尽力された方々に敬意を表します。

駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)
駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)
駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)
駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)
タービンの翼の状態が良く判ります。大正時代とは思えない精密加工です。
駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)
駆逐艦澤風のタービン@三崎公園(いわき市)

 晩秋の紅葉が終わりかけた背景に赤錆に覆われたタービンが溶け込んで非常によくマッチしています。

 人目につかない裏側に回るとハチの巣がついており、すっかり公園の一部に溶け込んでいるようです。すぐ近くにある木は桜のようです。その時期に再訪し違った雰囲気での写真も撮ってみたいです。

いわき市ポートタワー
晩秋の日を反射するポートタワー

 残念ながら、峯風型は現時点(2020年11月)では艦これに登場していません。2型後の睦月型からは登場しています。

 その代わりかどうか謎ですが、いわき市小名浜観光 PR アニメ『人力戦艦!?汐風澤風』という画像がYouTubeにアップされていました。管理人はまだ見ていませんが、目論見どおり観光PRに役立つと良いのですが。

桜と澤風タービン

  2021/4/3いわき市三崎公園を再訪しました。赤茶けたタービンと桜の薄桃色とのコントラストが良い感じです。旧海軍の遺物に桜は実によく合いますね。

 暖かい週末のため家族連れでにぎわう公園でしたが澤風タービンの前には花見の人もおらず、ここだけ静かな雰囲気です。

 桜には興味を示さずに一人で謎の物体の写真を撮りまくっている寂しいオジサンは周りの家族連れからは明らかに浮いており、不審な目でみられました。しかしそんなことは気にしません!満足して帰宅しました。

 管理人的には大発見だと考えている、いわき市内某所の澤風のタービンと思しき物体の写真、記事は写真を増やした上で、もう1基の澤風タービン??に移しました。そちらもご覧ください。(2021/4)

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