作製のお供(資料紹介)

模型作製に役立つ資料の紹介

軍艦雑記帳 上巻/下巻 

 森恒英著 タミヤ

 模型ファンの情報誌として出されているタミヤニュース(1967年創刊;私より1歳センパイです)に連載されていたコンテンツを2冊にまとめたものです。尚、タミヤニュースは現在でも発行が続けられています。

 軍艦雑記帳の記事は、昭和58年から平成2年までの6年間72回分の内、前半36回分を上巻(装備類)に残り半分を下巻(船体)に分けて出版されています。

 艦艇模型ファンがリサーチに基づく模型を作れるようすることが、本書の目的だそうです。まさに我々モデラーのための本です。

軍艦雑記帳 上巻/下巻 

 例えば艦艇模型を作っていると用途が良くわからない小部品などがあります。この本では船体の部分毎にこれら構造物が何であるかをイラストで解説しています。

 艦艇模型は細かい部品が多いですが、この本を見るとそれらの部品の機能、名称は何なのかを知ることができます。

 また、内部構造を示した断面図や、軍艦の大きさを理解するため工夫も豊富です。1/700艦艇模型では反映されない小さな部分についての解説も含まれます。

 これは、1/700以外の大スケールのモデラーへの配慮だと思います。艦艇模型作製に直結しなくてもページをめくって端正なイラストを眺めるだけでも十分に楽しいです。

 とにかく内容が濃い上、価格も安く手元に置いておくと役に立つことうけあいです。パンフレット的な扱いで本屋では見たことはないです。

 模型店店頭や模型展示会でのタミヤブースで販売されているのを見た事がありますので、そうしたルートで入手してはいかがでしょうか。

超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑(2015)

 学研ムック

 日本海軍の艦艇の解説本です。P89~P96に日本の全空母の飛行甲板の塗装図が載っており、この部分の利用価値が高いです。大戦末期の空母は迷彩塗装が特徴ですが、これが網羅的に紹介されている文献はあまり無いです。

超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑

 これ以外にも超ワイドの名前の通り、見開きメージが充実しています。中でも各カテゴリの艦艇の年代にともなう発達・系譜図が整備されており、それぞれのカテゴリの艦がどのように発達してきたかが良くわかります。

 面白いのは未成艦についても記載されており、当時どのような艦艇の整備戦略を考えていたのかが垣間見えます。

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超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑 (学研ムック)

1/700艦船模型の簡単塗装&迷彩テクニック (2017)

 モデルアート社

 帝国海軍の艦艇では迷彩塗装は少ないので海外艦の紹介も含まれていますが、日本の艦艇での単色塗装でもメリハリをつけたコントラストを筆塗りで仕上げた例など、参考になる作例ものっています。特に役に立つのはP62-71の日本の艦艇での迷彩塗装の主要例の紹介ページです。

 P68-70には空母の飛行甲板の塗装図が載っており、上で紹介した日本海軍艦艇図鑑とも一部重複しています。

 この本から、引用が1944年夏に行われた飛行甲板迷彩実験でのパターンであることが解ります。大鷹型3隻と思われる特殊な迷彩塗装が載っており、これを見ると大鷹型の作製意欲が沸きます。

 余談ですが大鷹型は模型の発売が古いので、担当のアオシマさんが最新技術でリニューアルしてくださる事を心待ちにしております。大鷹型3隻とも必ず買います!。

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まるわかり!1/700艦船模型の簡単塗装&迷彩テクニック 2017年 10 月号 [雑誌]: モデルアート 増刊

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『まるわかり!1/700艦船模型の簡単塗装&迷彩テクニック』

日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編 (2012)日本海軍小艦艇ビジュアルガイド2 護衛艦編 (2017)

 岩重多四郎著 大日本絵画

 冒頭で紹介した、戦時輸送船ビジュアルガイドと同じ著者による姉妹編的な本です。こちらは戦闘艦艇を対象としていますが、メジャーな戦艦、空母、巡洋艦ではなく駆逐艦、護衛艦にフォーカスしています。

 駆逐艦、護衛艦は種類、竣工した隻数が多いため、艦艇模型のラインアップ充実には欠かせませんが、同型艦が多いためどうしても形状や塗装が重複しがちになります。

 この本では小艦艇の同型艦内であっても、建造時期や時代による改造後のバリエーションが充実しています。

 そのため、各艦毎の個性をだし重複を避けた模型作製の助けになります。また、同型艦の中でも特殊な改造をされた艦も数多くピックアップされています。

日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編 (2012)
日本海軍小艦艇ビジュアルガイド2 護衛艦編 (2017)


 さらに、市販キットのメーカー毎の修正点が寸法込みで書かれた図面も掲載されています。模型の精度を高めたい場合にはより正確な改造も可能です。

 艦によっては舷窓の配置パターンまで書かれています。私はこの活用にはいたらず、外見の大きい特徴を参考にしているだけですが。。

 駆逐艦編はまだお馴染みの艦が多いですが、護衛艦編では市販キットがある海防艦以外にも、キットがない掃海艇、哨戒艇、駆潜艇等の珍しい艦艇の模型が充実しています。相当部分の艦が船体含めた著者の自作によるものです。

 私のレベルだと手が出せないですが、このような艦があったことを模型で見るだけでも面白いです。中には既存キットの改造で作れるものも紹介されており、当サイトではそうした艦を選んで作っています。

 尚、駆逐艦編については増補版が2017年に発売されているので、これから購入するのであればそちらをお勧めします。大型書店では旧版も売っている所ありますのでご注意ください。

 上の写真は旧版です。管理人は増補版未購入のため。

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日本海軍小艦艇ビジュアルガイド駆逐艦編 増補改訂版: 模型で再現 第二次大戦の日本艦艇
日本海軍小艦艇ビジュアルガイド2護衛艦艇編: 模型で再現 第二次大戦の日本艦艇

日本補助艦艇物語 福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記 第十巻

 光人社 1993年

 この本は図書館で見つけたものです。この記事を書いている2021/1からすると、四半世紀近く前の本で入手は難しいと思いますが、非常に貴重なデータが掲載されているので紹介します。

 著者は本ページでも紹介の日本海軍艦艇写真集 にもお名前がある福井静夫氏です。

 著者紹介によると昭和13年より海軍造船中尉として任官されその後、海軍技術少佐、終戦時は舞鶴工廠富山分工場首席部員兼造船科長を歴任された海軍艦艇建造、改造に深くかかわられた方です。

 戦後本分野の研究家としての著書の内、補助艦艇について書かれたものを集めたものですが、巻末によると補助艦艇のみをまとめた本としては日本初とのことです。

日本補助艦艇物語 福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記 第十巻


 特に貴重なのはP343~370に記載の“あ号作戦後の兵装装備の実況調査”の項です。この項はあ号作戦(マリアナ沖海戦)の戦訓に基づき、補助艦艇を改装した結果を図示したものです。

 福井氏ご自身が呉海軍工廠の担当部員(当時技術少佐)として工事終了状態(対空兵装、電探、爆雷投射基の設置状況)を現地調査してまとめた図面なので信ぴょう性が極めて高い資料です。

 水雷艇、海防艦、一等輸送艦、二等輸送艦、敷設艦、駆潜艇等々の内、当時生き残っており改造された各艦毎の武装設置状態によると海防艦丙/丁型では艦橋両サイドに機銃座を設けた艦と、設けていない艦が半々ぐらいでした。

 また、二等輸送艦ではこの時期の改造で殆どの艦で艦橋前にも銃座が設けられたことや艦前半の車両搭載部の両側には隙間なく単装機銃が搭載されたことが解ります。

日本補助艦艇物語 福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記 第十巻

 いずれもあまり見たことがない図面で、駆逐艦以上の軍艦でも資料が少ない大戦最末期の状態を補助艦艇で知ることができたのは驚きでした。

 これがあれば海防艦の作り分けもできます。本サイトでも海防艦三宅は本書に掲載の図面を参考にして作製しました。

 上で紹介の日本海軍小艦艇ビジュアルガイド2 の一部図面の参照元になっているようです。

 図面が掲載されていた艦艇の内、市販で模型化されているものを示します。

・水雷艇:千鳥型、鴻型
・海防艦:択捉型御蔵型日振型鵜来型一号型海防艦二号型海防艦
・輸送艦: 一等輸送艦二等輸送艦 (第103号型のみ)
・掃海艇:19号型
・駆潜艇;13号型
・敷設艦:平島型
・哨戒艇:31号型(2等駆逐艦ベース)
・給糧艦:間宮、伊良湖
・掃海特務艇:第1号型

日本補助艦艇物語 福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記 第十巻

海防艦 三宅戦記 輸送船団を護衛せよ

 浅田博 光人社NF文庫 2013年(昭和60年出版<嗚呼 海防艦 三宅> 改定)

 海防艦三宅(御蔵型2番艦)に実際に搭乗していた著者が、同艦に搭乗していた戦友達の手記もプラスして記したものです。

 当時参加していた作戦や護衛した艦船の情報も戦後調査し書かれているので、読み物としてのみではなく当時の海上護衛の資料としても優れています。

 三宅は元々択捉型海防艦として起工され建造中であったものが設計変更により戦時急造型の御蔵型になったとあり、その建造のドタバタから話が始まります。

 竣工後も一つ間違えは沈没必至の対空、対潜戦闘をくぐりぬけますが、坂道を転げ落ちるように悪化する戦局に伴い益々厳しくなる状態の中、良くぞ大戦を生き残ったものだと感じました。

 また、改めてですが太平洋戦争は日本にとってシーレーンの確保が最重要事項であったことがよく判ります。

 1944年後半以降は輸送路を潜水艦に締め上げられ、さらに米機動部隊の攻撃も受けるようになり輸送が滞り、実質的に国として戦闘継続が困難になっていた状況の記述もリアルです。

 行動中に同行、遭遇した艦船に関する記載も多く、三宅のみならず大戦後半の他輸送船、護衛艦の状況も知ることができ背景の理解が深まりました。

 こうした戦記を読むと御蔵型を作る際にはまずは海防艦三宅を作りたくなりました。

 という訳で作ってみたのが、海防艦三宅の模型です。上で紹介の日本補助艦艇物語 福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記 の図面を参考にしました。(この項2021/6更新)

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海防艦三宅戦記―輸送船団を護衛せよ (光人社NF文庫)

1/700ウオーターラインシリーズの歴史

艦艇模型スペシャル NO.81,2021 秋 モデルアート社

 1971年がウオーターラインシリーズの誕生年なので2021年が50周年になります。その歴史をたどり50周年を記念した企画本です。

艦艇模型スペシャル NO.81,2021 秋 モデルアート社

 最近では中古店でもおがめない1970年代の初版キットが多数紹介されています。ほとんどが模型がリニューアルに伴う絶番キットです。

 また、共通兵装パーツの追加によるリニューアル版を1990年代発売としていますが原型は1970年代発売のキットも含まれています。このように紹介されているキットの2/3は約半世紀前!の1970年代のキットです。

 1970年代の日本艦艇キットは1971~74間に主要艦艇が網羅されたこともあり、精度的には現在のキットとは比べるべくもないです。

 しかし、本書で紹介された70年代キットをコンプリートした身としてはなつかしさ全開でした。ソリッドモデル的な当時のおもむきが感じられます。

 しかもこれを70年代の技術のみで作るというレギュレーションが本書では課されており、当時の古き良き模型感がでています。(かといって、自分で作るか?と言われると、最新模型がいいです。そこはドライです。)

艦艇模型スペシャル NO.81,2021 秋 モデルアート社

 中には特型駆逐艦(タミヤ)、氷川丸(ハセガワ)などの現在でも入手できるキットも含まれていますが、敢えて入手困難な古いキットを作りたい人でなければ作例的には参考にならないです。

 しかし、自分が子供のころや、その時代の写真を見たり、昔の新聞を読むようなタイプスリップ感覚があります。私は1968年生まれで今回紹介の模型は小学生の時に作っていたものばかりのため、私の年代~上の方で当時艦艇模型を作っていた方にはどストライクな企画です。

 もう1点面白い記事がありました。<1/700ウオーターラインシリーズの50年と洋上模型の歴史>という特別寄稿です。寄稿者の衣島尚一氏はモデルアートで37年間<連合艦隊編成講座>という記事を書いていた方です。

 本来はライバル会社である模型メーカー同士が手を組み、初の1/700というスケールでシリーズを始めた経緯から、拡充期、長い冬の時代などの歴史が良くわかります。

 後半部分はウオーターライン所属各社以外の1/700モデルの話(主にピットロードの健闘)や、艦艇模型の充実に寄与した<艦これ>や<アルペジオ>の話も載っています。躍進著しいヤマシタホビーの社長さん(山下氏)が、アオシマを最近定年退職された方ということも初めて知りました。

 一番面白かったのは、異なるメーカー連合の1/700統一スケールが生み出された背景です。詳細は本文に譲りますが、背景に大手模型メーカーの倒産という業界全体の危機があり、各社協力してこの企画が生まれたことに納得感がありました。

 いろいろあっても半世紀の間、同一コンセプトのシリーズが続いており、艦艇模型のグローバルスタンダードのスケール(縮尺)となり、益々広がっているのは素晴らしいことです。

 当サイトも微力ながら1/700模型を盛り上げていきたいと、この本を読み再認識した次第です。(大げさですが)

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艦船模型スペシャル 2021年 09 月号 [雑誌]

紹介量が多くなり今後も増えそうなので、新しく作製のお供2 のページも作製しました。こちらもご覧ください。

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