給兵艦という聞きなれない艦種の船です。大和型戦艦の主砲を運搬する目的に特化して建造されました。
大和型の46cm砲(正式名称:94式45口径40糎砲、機密保持のため40cmと表記)は呉海軍工廠でしか製造できませんでした。
大和は呉で建造されましたが、それ以外の工廠で建造される大和型には、呉で製造した主砲を建造地まで運搬する必要がありました。
しかし1基2760tもの主砲を運搬できる輸送船はなく、そのため樫野が建造されました。駆逐艦最大の秋月型でも2700tで大和型の主砲より軽量でした(軍艦雑記帳上巻P26参照)。
ちなみに、給油艦として建造された知床型1番艦の知床(能登呂型2番艦との呼び名もあるようですが、能登呂は水上機母艦として竣工)は給兵艦としても運用された時期がありましたが大和の主砲はサイズオーバーで運搬できませんでした。
本艦は1940年に竣工し1941年に戦艦武蔵の主砲を佐世保工廠に運搬した後、通常の輸送船として活動中の1942年に米潜水艦により撃沈されています。
本来の用途に使われたのは1度のみでしたが、当初予定では、横須賀で建造されていた信濃(空母に改造されたため、主砲は未搭載)や、それ以降の大型戦艦の主砲も運搬する予定でした。
同型艦も無く、艦これキャラとは無関係にも関わらずこのようなマイナー艦がキット化されたのは艦艇模型の拡充にとって非常に喜ばしことです。
組んだ印象は同社(ピットロード)の愛国丸、報国丸と似たような精密且つ、組み易さを意識したパーツ割りの優秀なキットです。
マストやクレーン類が林立しているのは、私のような輸送船好きにはたまりません。また、通常のキットではお目に掛かれない、大和型主砲の船体に隠れている各部(旋回盤、給弾室等)もパーツ化されています。
樫野本来の任務であった1941年の武蔵の主砲運搬時には船倉はキャンバスで覆われていたようですが、せっかくのパーツを生かすよう敢えてキャンバスで覆われていない状況も撮影しました。
フルハルの艦艇を付けると、旋回盤、給弾室とも収まりが良い筈なのですが、ウオーターラインでは上部がはみ出てしました。
模型水線間長 19.4cm
完全素組
このページを書いた直後の2020/10/9に読売新聞で、戦艦「大和」主砲製造した巨大旋盤、念願の展示へ・・大和ミュージアムに兵庫の企業が寄付 との記事が出ました。
ドイツ製の超大型旋盤で大和(当然、武蔵もであろう)の主砲の製造に使われ、2013年まで船舶用エンジン部品の製造で使用されていたそうです。
写真が載っていましたが、巨大な面盤(金属塊を取り付けて回転させる部分)を仰ぎ見た構図になっておりとにかく格好が良いです。実物を見に行きたいです。
ピットロード 1/700 給兵艦 樫野
PIT-ROAD 1/700 Special Cargo ship Kashino
発売年:2014
同型艦の他社模型:無し
船倉のカバーを鋼鉄製に交換した輸送船時の模型が樫野1942です。この模型にも砲塔輸送時に使ったキャンバス製のカバーも入っておりここで紹介の1941も選択、作製できます。