アオシマの大鷹型空母(大鷹、雲鷹、冲鷹)は1980年代のキットです。キットが出た当初は、よくぞマイナー艦を出してくれたと好意的な反応でした。
しかし、基本形は悪くないですが、今の目でみるといろいろ厳しい点が多いです。
特に、3番艦冲鷹は竣工時から高角砲の種類/配置が他の2艦(大鷹、雲鷹)と全く異なります。しかし切断式の飛行甲板(これまたレトロですが)と、機銃搭載数以外は同じです。ほぼ箱替えキットので違いが再現されていません。これは組み立て説明書を読むと確信犯ですが。
アオシマは一時期、艦これブームに乗って艦艇模型の発売に積極的でした。そのため、大鷹型に艦これキャラが設定されれば、同型艦が3隻ある大鷹型はリニューアルされるのではと期待していました。
しかし2019年に大鷹、2021年末に雲鷹が登場しましたが、リニューアルの気配はありません。冲鷹はキャラが設定もされていません。
そのうち現キットでコラボ商品がでた上、艦これに勢いがなくなりつつあるため、アオシマからでることはないと判断しました。
そのため、既存キットを使いなるべく現在のレベルに近づける検討をしましたのでご紹介します。
船体形状は護衛空母のイメージにあっており、モールドもアッサリのため手が加えやすいです。また中古市場で安価に手に入る利点もあります。
資料としては、作製のお供(資料紹介)2 で紹介した<航空母艦ピクトリアル>2022年出版の記事を参考にしています。
同様な資料は作製のお供(資料紹介)中の<帝国海軍総ざらいシリーズ>(空母版2014年出版)にもありますが、同じ出版社(大日本絵画)から後に出版された<航空母艦ピクトリアル>の方を採用しています。
この本によると、キットで再現しやすいのは大鷹で、雲鷹の改装後、冲鷹では結構大掛かりな改造が必要になります。
ただし、大鷹型は資料が非常に少ないのであまり気にせずに帝国海軍総ざらいシリーズを参考にしても良いかもしれません。
改造ポイント1 飛行甲板
飛行甲板は白線、エレベーター、着艦制動装置、着艦位置表示の丸型、が凸モールドされたタイプです。リニューアル前のキットに多かったタイプです。これらの白線は削り落とします。
凸モールドを削り落とす前に2つの作業をしておきます。
1.飛行甲板周辺のすべり止めモールドを生かす場合はマスキングテープで保護します
2.エレベーターは既存の凸モールドをガイドとしてあらかじめ凹モールドに掘りなおします。管理人はカルコ(針状の工具)を使いました。可動部なので深めに掘るとよいです。
この作業の後、紙やすり#600→#1000順で凸モールドを削りおとします。木甲板なので磨く必要はなく、粗めの仕上げ状態で問題ないです。


凸モールドだった部分が僅かに残っていますが、あとで同じパターンで白線を塗装するので神経質にならなくてもOKです。
マスキングテープをはがして飛行甲板の前処理は完了です。

空母では飛行甲板前方に遮風板が設置されていますが、このキットでは省略されています。これば目立つので再現します。
穴が開いている薄い板であれば使えますが、管理人はファインモールド製の真鍮部品を使いました。一番よさそうな幅の部品を前方エレベーター直前にゴム系ボンドで接着します。


改造ポイント2 船体
本キットでは、実際の艦艇同様に貨客船から空母に改装された状態を(ある意味)忠実に再現しています。そのため、貨客船の船体部分に空母の格納庫部分を後付けします。
古いキットで合いが良くないため、その部分に大きな隙間ができてしまいます。ここをパテで埋めます。(下写真の上)

空母に改装される前の貨客船新田丸などのキットがでており、船体部分は共通パーツとなっています。空母のキットが先行していますが、貨客船としてものちに発売する前提のパーツ割なのでしょう。
海鷹や千歳、千代田などの他艦艇から改造された空母も同じ構造のはずです。しかし、このように旧艦艇と船体とを共用しているキットはないです。
これらのキットとのバランスのためにも隙間は埋めます。格納庫側面の板型パーツの厚み精度が悪いので隙間を完全に消すのは難しいです。それでもパテは使った方が良いです。
気になる方は、粗目の紙やすりで処理しても良いですが、舷窓のモールドを潰してしまいます。そのため管理人はパテ埋め後、硬化前にはみ出した部分や埋まった舷窓の再生のみ行っています。

こうしたパーツ割りのおかげでマイナーな貨客船(八幡丸、新田丸)のキットも出してくれているのでこれくらいの手間を惜しんではいけません。
ポイント3 武装(大鷹、雲鷹改装前)
まずはキットが近い大鷹、雲鷹改装前を紹介します。
冲鷹は高角砲として12.7cm連装砲を搭載の他、25mm機銃の配置も異なるので次項4に譲ります。
雲鷹改装後は諸説あるようですが、冲鷹に近い武装配置が紹介されている<航空母艦ピクトリアル、作製のお供(資料紹介)2に掲載>を参考にしたので次項4にしました。
キットの武装には高角砲として12cm単装砲が付属しています。しかし古いので大味です。(下写真下段)
ウオーターラインの小型艦セット(駆逐艦、潜水艦の共通パーツ)に似たパーツがあります。(写真中段)本来は潜水艦用ですがこれを流用しても良いです。
管理人は奮発して軍艦堂さんという3Dプリンタパーツメーカーの四十五口径十年式十二糎高角砲を使いました。(写真上段)
インジェクションキットのパーツよりも脆く取り扱い注意ですが、砲身の太さや、砲架などの細部は芸術的です。

実際の設置状態は以下の通りです。パーツが精巧すぎるきらいはありますが、やはり武装パーツは新しいものがいいですね。ただし砲身が折れやすいので要注意です。
すくなくともウオーターライン共通パーツにはしたほうが良いです。


ポイント4 武装(冲鷹、雲鷹改装後)
冲鷹、雲鷹改装後は12.7cm連装高角砲4門搭載とされています。12.7cm連装砲は搭載艦艇が多いので良いパーツが多数でています。好きなパーツを使ってください。
管理人は、効果大!別売りパーツbest3で紹介の ピットロードの別売りパーツ新WW-II日本海軍艦艇装備セット[1]Rを使っています。

右舷後方は排煙を避けるためにシールド付きを使います。
飛行甲板の木目を模した塗装がやりすぎに見えるかもしれません。離れてみると管理人的には気になりません。

キットは大鷹の武装配置を基本としています。そのため25mm機銃の配置も冲鷹、雲鷹改装後ではキットと異なります。右舷煙突後方の25mm機銃は煤煙除けのシールド付きになるのでそれを再現します。


少なくとも冲鷹の高角砲が連装砲4門なのは確実なので、ここは抑えた方が良いです。
その他修正部、塗装
その他、25mm機銃、艦載艇などの部品は最新のパーツに変更しています。
錨は船体にモールドされていますが、形状、位置とも良くないので削り落とし、余剰パーツを接着します。先に紹介の新WW-II日本海軍艦艇装備セット[1]R の錨パーツがちょうどいいです。
塗装方法についてはサクサク塗装術(空母編)に準じています。
飛行甲板を接着せずに塗装(デッキタン、白線)を済ませます。塗装後に制動索を0.3mmのピアノ線で再現しています。
マストは通常はピアノ線に交換しますがこのキットでは出来が良いためそのまま使用しました。
冲鷹、雲鷹改装後は飛行甲板が延長されてます。キットでは延長状態のパーツが入っていますが、短甲板(大鷹、雲鷹改装前)の切断位置に深い切込みが入っています。

ここは横から見ると写真のように目立ちます。パテなどで処理した方が良いです。上の写真では錨は修正した後にしています。
飛行甲板
飛行甲板は船体への接着前に塗装をします。船体接着後は突起物やアンテナなのが邪魔となり取り回しが悪くなるためです。サクサク塗装術(空母編1)、同迷彩空母編も参照ください。
大鷹型では通常の塗装の他、試験的な迷彩塗装を行った例もあるとされいます。
作製のお供(資料紹介)超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑 に掲載された例(雲鷹)も作っています。キットが安価なのでいろいろやれます。

上が雲鷹、下が大鷹です。着艦用の制動索も削りおとしているので0.3mmφのピアノ線で再現しました。

搭載機
米海軍の護衛空母と異なりカタパルトがなく艦載機運用力がひくかった大鷹型では、南方への航空機運搬が主要任務でした。
そのため、艦載機ではない航空機を搭載すると模型映えしつつ、正規空母や軽空母と差別化できます。
実際に、冲鷹は陸軍の二式複戦屠龍を運搬中の写真が知られています。その状態を模型化しました。
雲鷹が夜間戦闘機月光を輸送した記録もあります。
ピットロードの本土防空戦を7箱購入し、1箱に3機入っている屠龍、月光を21機確保しました。キット本体が安価なので搭載機にお金と時間をかけるのも良いのではないでしょうか。

屠龍を満載した冲鷹です。航空機運搬に使われた空母ならではです。

同じく月光を満載した雲鷹です。
下地黒塗り
後発で作製した、大鷹、雲鷹(迷彩)では、下地を黒塗りにしています。船体側面のパテ埋めなどの状態を確認するためです。
管理人はあまりこの方法をとっていませんでしたが、所属模型クラブ(ミリオンウイングス)では、航空機やAFVで使われるこの手法を艦艇模型にも使っている方もいます。
凹凸がはっきりすることで模型が締まる感じもあり、ひと手間かかりますが良い方法です。
塗装は黒系のサーフェサースプレーを使っています。サーフェサーの方が黒系塗料よりも大容量で安価なため使いやすいです。
管理人はGSIクレオスのMr.フィニッシングサーフェサー 1500ブラックを多用しています。大容量で塗料のつきがよくなります。

飛行甲板は最後に接着するので、サーフェサー塗装時も実際には別々に塗っています。
完成
飛行甲板を接着後、探照灯、マスト類などを接着しウエザリングをすれば完成です。


最新の模型には届きませんが、飛行甲板上の凸モールドや艦側面の溝をなくして、とりあえず他の模型と並べて見れるぐらいにはなります。
最終的にはアオシマさんか、フジミさんあたりのリニューアルを待ちたい所ではありますが、手間もたいしたことがなく、模型も安価なのでつなぎで楽しむには良いと思います。
記事を書いている所で、アオシマから大鷹型の再販がアナウンスされましたが武装パーツがリニューアルされただけで本体は古いままのようです。(2025/6)
ネットでは品薄になっていますが、中古が豊富で再販もあるので、高いプレミアム扱いの品は購入しない方がよいです。
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1/700 本土防空戦 【S37】